ロマンティックナイト賞

築地市場は月に数度水曜休市というものがある。大井開催と重なる火曜日は大井仲間が競馬場に集まってくる。

昨日も夕方5時ごろから仲間がバラバラ集まってきた。その中にいっちゃんがいる。いっちゃんは私が勤めている店に以前在籍していた。私に大井競馬を教えてくれた、いわば師匠だ。

うまかった広場のベンチに腰を下ろすなり、いっちゃんは私に問いかけた。

アツシ、今日はどれだ

私たちは専門紙を広げる。二人とも馬柱の走破時計と上がりタイムに印をつけている。

今日はそうだなぁ、難しいけど最終かな

そうだよそうだよ、最終しかねぇよ

いっちゃんは予想して狙ったレースしか馬券を買わない。私も最近は買わない力を身につけてきた。余計なレースを買うと勝負レースへの資金配分が狂うからだ。

いっちゃんは走破時計と上がりタイムだけを見て予想する。パドックも返し馬も全く見ない。とにかく走破時計と上がりタイムなのだと言う。そこに穴馬が隠れていると。

3年前、大井の最終レースでいっちゃんは帯封を手に入れた。その時も上がりタイムがいい展開待ちような馬を狙って仕留めた。ただし、帯封が出るほど波乱を呼んだ馬はいっちゃんが酔っ払って間違ってマークした馬だったが。

私よりも若いマグロ屋のタカミツが9の馬単を仕留めた。タカミツは私たちとは違い、目の前のレースは全て手を出す。どこで当たりを引くかなんて分からないから全て買うというタカミツ流の筋がある。だから、夕方5時から大井に来て、ああでもないこうでもないと馬券を買わずに喋っている私たちの姿をタカミツは信じられないだろう。

メイン優駿スプリントは的場文男騎手の断然人気サブノジュニアが2着に破れ、赤岡修次騎手の伏兵バンドオンザランが優勝した。

そして私といっちゃんの勝負レース、大井最終のロマンティックナイト賞の時間がやってきた。

つづく