憲法とは

憲法の特色

憲法とは何か

憲法も一般の法律も、同じように法というルールです。つまり、憲法は法規範として存在しており、単なる道徳ではない点で、他の一般の法律と共通しています。

しかし、憲法は、一般の法律と根本的な部分に違いがあります。すなわち、一般の法律は、国民を対象として、国民の権利を制限する方向ではたらきます。刑法を例に説明すれば、罪を犯した者は、裁判などの手続を経て、罰金や懲役などの刑罰を科されます。このように、まさに刑法は、権利と自由を制限するものだといえます。

これに対し、憲法は、国家権力を対象として、国家権力のはたらいき方に規制をかけようとするものです。つまり、時の権力者が、自分たちに都合のよい政治をするために、政治に参加する国民の権利を勝手に奪ったり、国民が集会を開いて政治の仕方を批判する権利を奪ったりすることのないようにするのです。

つまり、憲法とは、国家権力を制限して、国民の人権を保障する、国家の根本的なルールである、ということができます。

憲法の歴史

憲法がこのような意味をもつようになるまでには、実は人類の長い権利人権獲得の歴史があります。

今日的な意味の憲法を立憲的意味の憲法といいます近代憲法ともよばれます。逆にいえば、このような立憲主義的な思想を反映していない国家のルールは、今日の憲法学の立場からは憲法と認められないということになります。

日本国憲法の特色

このように、憲法は一定の価値観をもってつくられています。日本国憲法も、立憲的意味の憲法であり、次に掲げる特色を有しています。

自由の基礎法

憲法基本的人権の保障を中核とした法であり、人権規定はその中核となっている

制限規範

憲法基本的人権の保障を実現するために、国家権力を制限する規範として存在する

最高法規

基本的人権の保障を中核に据えた憲法が、他のあらゆる国内法規と比べ、最上位に存在する

憲法の基本原理

国民主権

国民主権とは

国民主権とは、国民こそが国家の主人公であるという考え方をいいます。かつての君主制に対する概念です。

主権は、多義的な概念ですが、次の三つを意味します。

主権の概念

国家の統治権国家権力そのもの

意味は、国家の内部に対する支配権を包括的に示します。

国家権力の最高独立性

意味は、国家が対外的に独立性を有することを示します。

国政についての最高決定権

意味は、国の政治のあり方を決定する力ないしは権威を示す

国民主権憲法前文

憲法前文1項

日本国民は、政党に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたつて自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないようにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基づくものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。

国民主権という場合の主権は、前記の主権概念の三番目である国政についての最高決定権、つまり、国の政治のあり方を最終的に決定する力ないし権威を意味します。この意味の主権が国民にあることを国民主権というのです。

日本国憲法の前文1項は、ここに主権が国民に存することを宣言しとして、国民に国政についての最高決定権があることを表しています。

基本的人権の尊重

憲法11条

国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在および将来の国民に与へられる。

基本的人権とは

基本的人権とは、人が人であることにより、生まれながらに当然に有している基本的な権利をいいます。単に、人権とよばれることもあります。

基本的人権の有する性質

人権の固有性

人権は、憲法天皇からいわば恩恵として与えられたものでなく、人間であることにより当然に有するものとされる権利である

人権の不可侵性

人権は、原則として公権力によって侵されない権利である

人権の普遍性

人権は、人種、身分、性などの区別に関係なく、人間であるというだけで当然にすべて享有できる権利である

人間の尊厳性と基本的人権

憲法13条

すべて国民は、個人として尊重させる。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

日本国憲法が保障している基本的人権は、人間が自律的な一個人として、じゆうと生存とを確保し、これによって尊厳性を維持するため、必要な権利が当然に人間に固有の権利として存在することを前提として認めるものです。つまり、基本的人権は人間として固有の尊厳に由来するものです。

このような人間の尊厳の原理は個人の尊厳の原理ともいわれ、日本国憲法は個人の尊重を宣言しています。

平和主義

憲法前文2項

日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の構成と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。

憲法9条

1日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。

2前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

戦争を回避し、廃絶する取組みは、国際的にもさまざまに行われてきました。しかし、それらはいずれも他国への侵略戦争を制限し、または放棄する内容にとどまっていました。日本国憲法は、これらの動きをいっそう進め、戦争否定の態度を徹底しています。

人権とは

人権の保障と限界

人権の種類

人権は、自由権社会権参政権および受益権国務請求権の4種類に分類されます。

自由権

自由権とは、国家が個人の領域に権力をもって介入することを排除して、個人の自由な活動を保障する権利です。自由権はさらに、精神的自由権経済的自由権および人身の自由に分かれます。

社会権

社会権とは、社会的経済的弱者が人間に値する生活を営むことができるように、国家の積極的な配慮を求めることができる権利です。社会権の例として、生存権や教育を受ける権利があげられます。

参政権

参政権とは、国民が国政に参加することのできる権利をいいます。自由権を確保するためには、国民が政治に参加することが必要なため、参政権が認められています。

受益権

国民が国家に対して一定の行為を請求することができる権利です。受益権の例として、裁判を受ける権利や国家賠償請求権などがあげられます。

人権の享有主体

人権は、人である以上当然に有する権利です。しかし、日本国憲法は国民の権利義務という言葉を使い、人権を保障される対象人権の享有主体を国民に限るかのように読めます。一方でわが国には、日本国籍を有する者と外国人、自然人と法人など、さまざまな人がいます。以下、人権の主体となるかが問題となるものについて説明します。

天皇および皇族

天皇や皇族は、日本国籍を有する自然人です。人権は人であることにより有するとされるものですから、天皇や皇族にも保障されます。

しかし、天皇は日本国の象徴であり、特殊な職務を担っており、皇位世襲されます。また、皇族も天皇に準じ、特殊な職務を担っています。したがって、人権の享有につき宣言を受けることがあります。

法人

人権は、もともとは自然人を対象とするものですが、法人は、現代社会で社会経済活動を行う存在として、大きな役割を果たしていますから、可能な限り人権を認めるべきです。判例も、性質上可能な限り、法人に人権規定を適用するとしています。

ただし、法人は自然人と異なり、生命や身体をもたないため、これらを前提とする権利は認められません。

重要判例八幡製鉄事件

株式会社の代表取締役が、政党に政治献金をした行為について、同社の株主から責任を追及された事件

判示

憲法第三章に定める国民の権利および義務の各条項は、性質上可能なかぎり、内国の法人にも適用されるものと解するべきであるから、会社は、自然人たる国民と同様、国や政党の特定の政策を支持、推進しまたは反対するなどの政治的行為をなす自由を有するのである。

外国人

外国人は、日本国籍を有さないので、国民には含まれません。しかし、人権は人手あることにより有するとされるものです。したがって、日本国民に限って認められるものと考えられる人権以外は、外国人にも保障されます。

重要判例マクリーン事件

アメリカ人マクリーンが、在留期間を1年としてわが国に入国し、1年後にその在留期間の延長を求めて更新の申請をしたところ、法務大臣が、在留中にマクリーンが政治活動を行ったことを理由に更新を拒否し、その適否が争われた事件

判示

憲法第三章の諸規定による基本的人権の保障は、権利の性質上日本国民のみをその対象としていると解されるものを除き、わが国に在留する外国人に対しても等しく及びものと解すべきである

出入国の事由

入国の自由は、外国人に当然には保障されません。国際慣習法上、各国の裁量に委ねられています。

これに対し、出国の自由については、判例は、外国人の出国の自由を、22条に定める外国移住の自由として保障されるとしています。

さらに、再入国の自由については、判例は、わが国に在留する外国人は、外国へ一次旅行する自由を憲法上保障されているものではないとして、再入国の事由は認めていません。

政治活動の自由

外国人に政治活動の事由は認められるでしょうか。

政治活動は政治的な表現活動ですから、表現の自由という精神的自由権の側面から考えると、日本人か否かを問わず保障されるべきであるとも考えられます。しかし、政治活動には参政権的な側面もあり、無制限に認めることは、国民主権との関係で問題が生じます。

この両者の調整の観点から、判例はわが国の政治的意思決定又はその実施に影響を及ぼす活動等外国人の地位にかんがみこれを認めることが相当でないと解されるものを除き、その保証が及ぶと判示しています。

参政権

外国人は、国政選挙についても地方選挙についても、憲法参政権は保障されていないとするのが判例です。すなわち、公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利であるとされていますが、この権利は、権利の性質上日本国民のみを対象とし、わが国に在留する外国人には及ばないと判示しています。

ただし、憲法は第八章で地方自治について定めており、そこでは、住民の日常生活に密接な関係を有する事務については、住民自治に基いて処理することを制度的に保障しています。そして、地方選挙について地方公共団体の長、その議会の議員及び法律の定めるその他の吏員は、その地方公共団体の住民が、直接これを選挙すると定めています。

そこで、判例は、この住民とは、地方公共団体の区域内に住所を有する日本国民を意味するが、わが国に在留する外国人のうちでも永住者等であってその居住ずる区域の地方公共団体と特段に密接な関係をもつものについて、法律をもっと、地方公共団体の長、その議会の議員等に対する選挙権を付与する措置を講ずることは、憲法上禁止されているものではないと判示しました。

重要判例定住外国人地方参政権事件

日本に永住資格をもつ在日韓国人である原告らが、居住地の各選挙管理委員会に対して、選挙人名簿に登録することを求めたが、却下されたため、この却下決定の取消しを求め提訴した事件

判示

公務員を選定罷免する権利を保障した憲法15条1項の規定は、権利の性質上日本国民のみをその対象とし、右規定による権利の保障は、我が国に在留する外国人には及ばないものと解するのが相当である

国民主権の原理及びこれに基づく憲法15条1項の規定の趣旨に鑑み、地方公共団体が我が国の統治機構の不可欠の要素を成す者であることを併せ考えると、憲法93条2項にいう住民とは、地方公共団体の区域内に住所を有する日本国民を意味するものと解するのが相当であり、右規定は、我が国に在留する外国人に対して、地方公共団体の長、その議会の議員等の選挙の権利を保障したものということはできない

我が国に在留する外国人のうちでも永住者等であってその居住する区域の地方公共団体と特別に密接な関係を持つに至ったと認められるものについて、その意思を日常生活に密接な関連を有する地方公共団体の公共的事務の処理に反映させるべく、法律をもって、地方公共団体の長、その議会の議員等に対する選挙権を付与する措置を講ずることは、憲法上禁止されているものではないと解するのが相当である。

人権の限界

基本的人権は、最大限保障されるべきです。ただ、人は自分の人権を尊重してもらいたければ、他者の人権にも配慮をしなければなりません。たとえば、いくら事実であるからといって、他人の名誉や信用を損なうようなことを無制約に公言することは許されません。表現の自由が発言する者にある反面、名誉や信用など、法律上保護を受けるべき権利や利益が他者にあるからです。他人の名誉や信用を損なうような表現を制約なく行う自由など存在しません。

その意味で、人権といえども、まったく無制約なものではなく、他者の人権との調整のうえで制約を受けるのです。

公共の福祉

内在的制約

基本的人権の制約について、憲法では次のように規定されています。

まず、12条では、国民は、基本的人権を公共の福祉のために利用する責任を負うと定めています。また、幸福追求権を定める13条は、幸福追求権は、公共の福祉に反しない限り、国政のうえで最大の尊重を要すると定めています。

このように、基本的人権は、公共の福祉による制約を受けます。ただし、基本的人権は、最大限尊重されるため、その裏返しとして、公共の福祉によって必要最小限の制約しかできないとされています。

憲法12条

この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを乱用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。

憲法13条

すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

公共の福祉の意味

公共の福祉の意味については、三つの学説が対立しています。

一元的外在制約説

基本的人権は、すべて公共の福祉によって制約される。22条および29条の公共の福祉という文言に特別の意味はない

内在外在二元的制約説

公共の福祉による制約が認められる人権は、その旨が明文で定められている経済的自由権および国家の積極的施策によって実現される社会権に限定され、その他の権利自由は内在的制約に服するにとどまる

一元的内在制約説

公共の福祉は、人権相互の矛盾衝突を調製するための実質的公平の原理であり、すべての人権に論理必然的に内在している。そして公共の福祉は、自由権を各人に公平に保障するための制約を根拠づける場合には、必要最小限度の規制のみを認め、社会権を実質的に保障するために自由権の規制を根拠づける場合には、必要な限度の規制を認めるものとしてはたらく

特別の法律関係

在監者刑事施設の被収容者や公務員は、法人や外国人と異なり、人権の享有主体であることは間違いありませんが、普通の人とは異なる、特別な立場や地位に置かれています。こうした公権力と特殊な関係がある者には特別な人権制限がなされます。

在監者の人権

在監者は、公権力により強制的に拘束されている特殊な法律関係にあります。在監者の人権制限が正当化される根拠は、憲法自身が在監関係を認めており、当然に一般国民とは異なる制約を予定しているという点です。つまり、憲法は国家による刑罰を認め、その具体化として在監関係を認めている以上、在監者の身体が拘束され、その他の自由も制限を受けることはもともと憲法が予定しているのだということです。

在監者の基本的人権を制限することは認められますが、その制限は、在監目的を達成するための必要最小限のものにとどまります。なお、同じ在監者であっても、受刑者と未決拘禁者とでは、拘禁の目的が異なりますから、制限される内容が異なるとされています。

未決拘禁者について判例は、次のように判示しました。

重要判例よど号ハイジャック新聞記事抹消事件

東京拘置所に勾留されていた左翼活動家の原告らが、拘置所内で読売新聞を私費で定期購読していたが、同拘置所長が、よど号乗っ取り事件に関する記事を墨で塗りつぶして配布したため、同処分は違法であるとして国家賠償請求を求めた事件

判示

未決勾留により監獄に拘禁されている者の新聞紙、図書等の閲読の自由についても、逃亡及び罪証隠滅の防止という拘留の目的のためのほか、監獄内の規律及び秩序の維持のために必要とされる場合にも、一定の制限を加えられることはやむをえないものとして承認しなければならない。しかしながら、未決拘留は、刑事司法上の目的のために必要やむをえない措置として一定の範囲で個人の自由を拘束するものであり、他方、これにより拘禁される者は、当該拘禁関係に伴う制約の範囲外においては、原則として一般市民としての自由を保障されるべき者であるから、監獄内の規律及び秩序の維持のためにこれら被拘禁者の新聞紙、図書等の閲読の自由を制限する場合においても、それは、刑事司法上の目的を達するために真に必要と認められる限度にとどめられるべきものである。

公務員の人権

公務員の人権も、一般国民とは異なる制約を受けます。その制約の根拠は、憲法が公務員という存在を予定していることから、公務員であるがゆえの制約を受けると考えられるからです。

公務員の人権制限として問題となるのは、政治活動の自由と労働基本権です。

公務員の政治活動の自由

公務員の政治活動は、国家公務員法102条1項および人事院規則14-7により、一律に禁止されています。

議員内閣制の下では、行政の職務の中立性が保たれていてはじめて、政策が忠実に実行され、行政の継続性が維持できます。そこで、公務員の政治活動の自由を制限する必要があるのです。

ただし、公務員といっても、一般の勤労者であり市民であうことは、私たちと変わりありません。そこで、政治活動の自由に対する制約も、必要最小限の制約であることが必要です。必要最小限の制約といえるためには、制約の目的が正当であること、目的達成の手段として必要最小限の制約であることの二つが必要とされています。

この点につき判例は、次のように判示しました。

重要判例猿払事件

猿払村の郵便局員が、選挙用ポスターを公営掲示板に掲示したなどの行為が、国家公務員法102条および人事院規則14-7に違反するとして起訴された事件

判示

公務員の政治的中立性を損なうおそれのある公務員の政治的行為を禁止することは、それが合理的で必要やむをえない限度にとどまるものである限り、憲法の許容するところであるといわなければならない。

国公法102条1項及び規則による公務員に対する政治的行為の禁止が右の合理的で必要やむをえない限度にとどまるものか否かを判断するにあたっては、禁止の目的、この目的と禁止される政治的行為との関連性、政治的行為を禁止することにより得られる利益と禁止することにより失われる利益との均衡の三点から検討することが必要である。

公務員の労働基本権

公務員の労働基本権の制約は、公務員であるがゆえの制約です。公務員の職種の違いにより、労働三権団結権、団体交渉権、争議権の全部または一部が、制限されます。

憲法規定の私人間効力

憲法は、人権が国家権力によって新貝されてきたという歴史的事実から、国家権力によって人権が侵害されないように、人権保障規定を置くに至りました。つまり、憲法はもともと、国家と私たち私人との間を規律する公法であるといえます。

しかし、現代においては、私人のなかにも、人権を侵害する社会権力として、巨大な資本と情報力を有する私的団体が登場してきました。そこで、憲法の規定が、私人間にも適用されるのではないかということが問題となります。

私人間効力についての考え方

無効力説

憲法の規定は、私人間には適用されない

直接適用説

憲法の人権規定は、私人間に直接適用される

間接適用説通説

規定の趣旨、目的ないし法文から直接的な私法的効力をもつ人権規定を除き、私人間効力を認めないが、法律の概括的条項、特に公序良俗に反する法律行為は無効であるとする民法90条のような一般条項を、憲法の趣旨を取り込んで解釈適用することによって、間接的に私人間の行為を規律すべきである。

重要判例三菱樹脂事件

被告に採用された原告が、在学中の学生運動歴について入社試験の際に虚偽の申告をしたという理由で、3月の試用期間終了時に本採用を拒否されたため、その適否が争われた事件

判示

憲法の右各規定19条、14条は、同法第三章のその他の自由権的基本権の保障規定と同じく、国または公共団体の統治行動に対して個人の基本的な自由と平等を保障する目的に出たもので、もっぱら国または公共団体と個人との関係を規律するものであり、私人相互の関係を直接規律することを予定するものではない

私的自治に対する一般的制限規定である民法1条、90条や不法行為に関する諸規定等の適切な運用によって、一面で私的自治の原則を尊重しながら、他面で社会的許容性の限度を超える侵害に対し基本的な自由や平等の利益を保護し、その間の適切な調整を図る方途も存するのである。

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